森の幼稚園

Kindergarten in Woods
The importance of the nature experiment in childhood
3月の初めというのに寒波に襲われたドイツは、どこも白い雪景色となった。ドイツ南西に位置し温暖なはずのフライブルクでもその日は一面の雪景色。

リーゼルフェルト団地は1960年から70年の住宅難がドイツ全体で問われた際に開発された、フライブルク市の西側、約27ヘクタールの居住区団地。団地に隣接して更に西側には250ヘクタールの自然保護地域が広がる。リーゼルフェルト団地からその西の森に入り込み雪の中を歩いて行くと、子供達の赤や黄色や青のアノラックやスキー服、ブーツの色がちょこちょこと動いている。

先生とあいさつをし子供達に近づくと、楽しそうに数人の年少組の子供が枯れ木で組んだテントのような家の中で嬉しそうに動いている。その少し左の方には、「砦」だというやはり枯れ木で組み立てたものがあった。年長組がそこによじ登って遊んでいた。一人の男の子が、「ここの部屋が牢屋で、鍵を開けると出られる。」と言っていた。

森の幼稚園はフライブルクに5つあり、このような自然と隣接する住宅地のはずれに位置して散在している。子供の教育では、自然に触れることが非常に大切だということが、毎日森で過ごすタイプの幼稚園の大前提となっている。スカンジナビアでは、ずいぶん前から始められたというが、ドイツも注意力散漫な子供という問題が提起され見直された結果、集中力・観察力等のバランスの良い発達は、身体を動かして行動する要素が不可欠であるという考え方を実行しようとする幼児教育が取り入れられた。リーゼルフェルト・森の幼稚園は2000年から始まっている。

本来自然の複合体である人間が、子供時代の感性豊かな時期に、コンピュータやテレビに時間を費やし、身体の感性や運動性の発達の機会を十分に与えられないということは問題ということである。毎日木によじ登り、雪で遊び、焚火の色を見て匂いを嗅いだり、肌で感じ、森の風の音を聞く。こんな体験を毎日している子供達はなんと幸せなのかと思った。

その森の幼稚園の先生は、「こうした毎日森にいる体験を通して、何が自分にとって危ないことか自然に判るようになるようです。けがは殆どありません。ちょっと転んで泣き出す子供もいません。また、社会で大事な相互の助け合いという訓練がグループで木に登ったり、助け合ったりして自然に身につくようになります。

森が毎日の生活の場ですから、将来、森イコール自分の幼児体験の故郷として、自然を大事にするようになると思います。森という故郷の中に集中力、社会性、想像力という彼らの人格形成が潜んでいるのです。」と、自信を持って説明してくださいました。
かたわらでは、子供達が炎の色は赤や黄色.......と自分達で作ったメロディーをつけて口ずさんでいた。「環境教育」とは、何かをまた考えさせられた。

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